東北6県から80名がエントリー~全国スキー競技大会
第29回スポーツ祭典の最後の種目となる第39回全国スキー競技大会は、被災地でもある岩手県下倉スキー場で行われました。
大会当日の朝7時過ぎ、降りしきる雪の中をリフトで競技バーンに向かうと、唖然としました。
「昨日確認したスタートハウスがない!」
スタートハウスは風で飛ばされ、コースの中に埋まっていました。その片づけにスキー場関係者は奔走。「自然相手の競技はこれだから先が読めない」と思いながら、コースづくりを急ぎます。
この間にも、選手を受付し、計時係は計測テストを繰り返すなど、各係は粛々と対応していくことになります。
セッターは、電動ドりルであけた穴に青、赤の可倒式のプラスチック2mほどのポールを立てて旗門をセット。それを別の係が固定していきます。このポールがけっこう重く、1本1kgぐらいあります。今回、旗門の数は39なので大変です。GSL(大回転)は1旗門で4本使うので、寒い時はさらに大変です。そこをマーキング(抜けた時、場所が分かるように色を付ける)していき、旗門審判員が配置につき、選手のインスペクション(コース下見)が始まりました。
インスペクションの光景は圧巻です。全選手が、スタート地点から整然と、それぞれの考えでチェックポイントを頭に入れながら、ゴール地点まで行きます。コース上が、色とりどりのウェアで覆われ、一番華やぐ時かも知れません。
インスペクションが終わった選手はスタート地点に戻り、スキー板のワックスを塗ったり、アップを行ったりして、自分の出走順を待ちます。今回のように寒い天候の場合、この時間をどのように過ごすかは重要になります。
選手の出走の前に「前走」が数人滑り、コース状態を報告し、GOサインがでると競技開始です。40秒間隔で選手がスタートしていきます。このとき点呼係が選手を確認し、スタート位置に整列させる役割を担います。競技中に転倒やコースアウト、旗門不通過などの失格があると、旗門審判員がトランシーバーでゴールハウスと交信して、記録されます。
1日目はSL(回転)競技。旗門間が短く、早い動作が求められるため「技術系」と呼ばれます。
天気は回復せず、役員の判断によって「SL競技は1本目の競技成立をもって終了」となりました。
午後一番での表彰式の主役は、地元「松尾ジュニア」の子どもたち。各部の入賞者にメダルが授与されるたびに「イヨッ、ニッポン一番」「イヨッ、ニッポン二番」と大きな掛け声をかけて盛り上げてくれました。これには、入賞者もニンマリ。なにはともあれ、やっぱり「子どもの笑顔が一番」と言える光景がここにありました。
2日目は、GSL(大回転競技)。少し風があり、寒さはあるものの、晴れたなかで行えました。スタート地点は一番上部から。全日本スキー連盟公認の長さ1200mのコースで、秋田や青森から練習に来る人も多く、ポール練習のメッカとなっているようです。
この日は、最初から1本勝負。参加選手の帰りのことも考えた中での運営です。
1日目の立役者、松尾ジュニアの選手は、学年ごとにまとまってコーチと一緒にインスペクションを行い、トランシーバーで出走前にコーチからのアドバイスを受けて、スタート台に向かいます。選手の保護者やコーチの役割分担も整っている様子が見て取れます。
タイムの発表を聞くと、1分を切る選手は少なく、コースの長さを物語っていました。こうした中、普段このコースで練習しているという青森の選手がラップ(最速タイム)を取りました。本人は「まぐれです」と言うものの、やはり実力が出たというところです。
今大会は「復興支援」を掲げて、次世代が育つ東北の地で開催できたこと、東北6県から80名もの選手がエントリーしたことは、スキー界にとっても意義ある大会だったと言えるでしょう。18都道府県から約150人のエントリーがありましたが、参加のなかった兵庫からは「参加できない分を、募金を集めて送りたい」とのメッセージが寄せられるなど、周りから支えられていることを感じられた大会でした。