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 スポーツ選手における問題行為が連日、新聞やニュースを賑わしている。 サッカー選手が表彰式でガムを噛んだり、壁に寄りかかる愚行はまだ記憶に新しい。 その他にも大学生の大麻所持、わいせつ行為、いじめ、暴力事件など。 さらに、選手の見本とならなければならない大人(連盟役員)の横領事件。 イチローや石川遼など、海外で日本人選手が多く活躍する時代にはなったが、 日本のスポーツ界全体に目をやると、健全ではない空気で埋め尽くされている。 2009年2月新日本スポーツ連盟は『フェアプレイ宣言』を打ち出した。 フェアプレイはこれまで推進されてきたが、根付いていないのが現状。 なぜこのタイミングで『フェアプレイ宣言』を出したのか!?

司会 今になって、なぜ新日本スポーツ連盟は『フェアプレイ宣言』を発表したのですか。
永井 近年、スポーツの世界では暴力や金銭問題、人のトラブル、大麻問題、組織や個人を含めて、いろいろな問題があります。そういう問題に対し、ただ手をこまねいているのではなくて。『スポーツを人間の権利として運動してきた』私たち新日本スポーツ連盟が、多くの人たちの共感を得ながら、スポーツを前進させていきたい。つまり内面からスポーツの価値を支える者として、フェアプレイを軸に、内外に発信していきたい。その思いから今回、『フェアプレイ宣言』を発表いたしました。

ボスが支配するのではなく、法が支配する世界へ
司会 なぜ大麻や暴力などの問題が出てくるのだと思いますか。
永井 指導者と組織の体質が問題を引き起こす温床となっていると私は考えます。日本スポーツ法学会の宣言で、「ボスが支配するのではなくて、法が支配する世界にしていかなければならない」というのがあります。そのようなことを共通の理解にしていかなければいけない。そういう時代になってきたのだと思います。

司会 具体的な例をお願いします。
永井 特に、組織の問題があります。まず先輩・後輩の絶対的関係です。これが選手を『一人の独立した人格を持った人間』への成長を妨げていると思います。次に、何か不祥事が起こると、大学生であっても、そのクラブ全体が試合に出場することを辞退してしまう。『一人の独立した人格を持った人間』が免罪されてしまう。それがスポーツを通じて人間形成を図る、大きな障害になっていると私は考えます。つまり独立した個人がクラブ・サークルという組織を作る。その形を作り上げていくことが今、問われているのです。

司会 それは戦前~戦後から続いてきた、先輩・後輩のような古い関係が今でもなくなっていないということでしょうか。
永井 私はそう思いますが、みなさんはいかがですか。
桑名 この問題にはさまざまな要因があります。最近の子供の指導法を見ても、ありえないものがざらにあります。例えば、バスケットボールで有名な高校の監督が、試合中、大勢の観客の前で、選手を殴る。そういった光景がある。私たちにはスポーツを形成作る一団体として、責任というものがあります。
 何かを発信しなければ、スポーツ界を変えられない。だからこそいろいろ問題が起こる中で、この『フェアプレイ宣言』を出しました。それを発表することで、日本のスポーツ界に対し、一石を投じる思いもありました。私たちスポーツ連盟はまだまだ小さな組織ですので、動いてもなかなか変わらないジレンマもあります。それでも発信し続けなければ、なにも変えることはできないと思います。

司会 では『フェアプレイ宣言』の、そのフェアプレイとはなんですか。通常フェアプレイはゲームの中だけという一般常識があります。新日本スポーツ連盟が考えるフェアプレイの意味とはどんなものですか。
桑名 これは私の個人的な意見ですが、フェアプレイとは相手の権利や人格を認めることだと思います。サッカーの中で、相手のジャージをひっぱることがあります。それ(その見えない反則行為)は相手を1つの人格として認めないことから起こってくる。自分も相手を1つの人格として認める。相手も自分を1つ人格として認める。それがフェアプレイという形であらわれると思います。それはゲームの中だけでなく、スポーツ全般、さらに私たちの生活の中にも生きてくるのではないでしょうか。

司会 そこまで広げてしまうと、フェアネスといった言葉の方がしっくりくると思いますが。
桑名 うーん、どうなのでしょう。
宇野 JFA(日本サッカー協会)は、フェアプレイという言葉はプレイに関すること、という狭い意味で捉えているようです。だから、もっと選手の両親やサポーターも含めた人格形成や雰囲気作りを目指し、『リスペクト・プロジェクト』を行っています。中身は抽象的なものが多いですが、言わんとしていることは、フェアプレイでは物足りない時代に来ている。そんな内容で、さきほど桑名さんがおっしゃったことと、この『リスペクト・プロジェクト』は重なりますね。

司会 そういう動きがあるということは、今の日本にフェアプレイは根付いていないということですか?
桑名 はい、根付いていないです。
永井 根付いていないですし、根付きにくいですね。スポーツ組織はほとんどが理事会と評議委員会からできています。その機関で(横領などのアンフェアなことが行われていたら、)フェアプレイが貫かれなかったら、実際の現場でフェアプレイなんて成り立たないと思います。フェアプレイは暴力や大麻などの問題を排除する力を発揮してくれると私たちは考えます。だからこそ桑名さんのおっしゃっていた「それぞれの人格として認め合う」ことが大切です。それは先輩や後輩という上下関係ではなく、人と人との関係が対等である。そこからフェアプレイが育まれるのです。

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「スポーツのひろば」2010年1-2月号より


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