「東京オリンピック中止を決議するよう求める」 声明を発表

新日本スポーツ連盟は「スポーツ組織の自律」を重視するスポーツ団体として、3月20日に「東京オリンピックは“開催ありき”の準備ではなく、国民の声に応えうる方針への再考を求める」との声明を発表し、IOC、組織委員会、東京都、JOCは国民の声に応えることを求めました。

しかしその後の状況 から 、このまま大会を開催することは、オリンピック運動の歴史に禍根を残すことになると考え 、組織委員会、東京都、JOCはIOCに対して 東京オリンピック中止を決議するよう求める声明を、新日本スポーツ連盟全国連盟・東京都連盟の連名で発表しました 。

声明「組織委員会、東京都、JOCはIOCに対して東京オリンピック中止を決議するよう求めます」

この声明では、国内外の市民の声、競技者の声に耳を傾け、人類の生命を第一として、今夏の東京オリンピックの中止決定をIOCに対して要請するよう求め ること、それはオリンピック運動に取り返しのつかない傷跡を残さないために必要 であることを表明しています。


組織委員会、東京都、JOCはIOCに対して東京オリンピック中止を決議するよう求めます

2021年5月17日
新日本スポーツ連盟全国連盟 新日本スポーツ連盟東京都連盟

新日本スポーツ連盟は「スポーツ組織の自律」を重視するスポーツ団体として、3月20日に「東京オリンピックは“開催ありき”の準備ではなく、国民の声に応えうる方針への再考を求める」との声明を発表し、IOC、組織委員会、東京都、JOCは国民の声に応えることを求めました。しかし私たちは、その後の日本および世界各国での新型コロナウイルス感染状況、さらに聖火リレーもテスト大会も満足に開催できず、しかも大会期間中の感染予防対策についての科学的で責任ある説明もない現状を熟慮したとき、東京オリンピックを開催することはあまりに無責任であると考え、組織委員会、東京都、JOCがIOCに対して今夏の東京オリンピック中止を決議するよう求める必要がある、という判断に至りました。このまま大会を開催することは、オリンピック運動の歴史に禍根を残すことになると考えてのことです。

感染拡大と医療体制不備の現状では安心・安全な大会は開けない

4月末現在、日本ではイギリス型の変異ウイルスが感染拡大の主要因となって第4波が到来しており、大阪では医療崩壊が起きています。世界に目を向けてもブラジルとインドが過去最多の感染者を出しており、感染拡大は収まる気配を見せません。組織委員会の資料(2019年7月30日)では、海外からの入国者(競技者、チーム役員、スポンサーの招待客や関係者等)に対する感染予防対策のために1万人の医療従事者が必要とされています。

加えて、第4波が到来している感染状況のもとでは判断ができないとして、組織委員会の橋本会長は国内観客の入場制限についての判断を6月まで先送りし、さらに「ギリギリの判断として無観客という覚悟を持っている」ことも示唆しました。大会開催の1ヶ月前に国内観客の入場者数を決めた場合に、それに対応した感染予防対策をどうするのでしょうか。海外からの入国者9万人の他に膨大な数に上る国内観客への感染予防対策とその体制を整備することが必須の条件となりますが、組織委員会からその説明はまったくなされていません。仮に、「バブル方式」や無観客での開催をしたとしても感染の危険性は排除できませんし、実際「バブル方式」での感染者も出ています。

政府、東京都、組織委員会は、新型コロナウイルス対策を一元的に担う「感染症対策センター」を設置することを決めていますが、上記のような競技者、大会関係者、国内観客への感染予防対策のための医療関係者の配置が、現在の日本のコロナ感染拡大の中で可能なのでしょうか。現在、2度のワクチン接種を終えた医療従事者が24%程度で、国民全体では4%です。あまりに遅れた日本でのワクチン接種状況をしっかりと理解すべきです。安全、安心な大会の開催とはほど遠い状況にあります。

参加競技者の公平性が保てない

さらに、オリンピックに向けたテスト大会も満足に開催できないだけではなく、感染拡大状況の違いによる各国競技者の練習環境の不平等、競技者やチーム役員のワクチン接種での格差が明らかに存在しており、フェアな条件が確保できているとは思えません。今後、ワクチン接種の遅れから不参加を表明する国、選手が現れることも想定されます。こうした状況はフェアではなく、アスリートファーストとはとても言える状況にありません。

参加競技者の決意とオリンピックの意義を重視すべき

日本国内で「再延長」と「中止すべき」が、70%を超える世論が高まる中で、参加競技者は以下のような発言をしています。新谷仁美さん(陸上長距離)は「アスリートだけがやりたいというのは私の中で違うと思う。国民の皆さんがやりたくないと言っていたら、開催する意味がなくなってしまう」、奥原希望さん(バドミントン)は「開催、中止どちらの可能性もあると覚悟しています。後ろ向きな気持ちになりがちな今だからこそ、さまざまな立場の人に寄り添いながらポジティブに考えることが大切だと思います」と述べています。

新谷さんや奥原さんの決意は、4年に一度のオリンピックに向けて全精力を傾けて練習・トレーニングをしてきた中での苦渋の選択だったと思いますが、しかし彼女らの言葉にはオリンピックの意義が集約されていると考えます。

「オリンピック憲章」にも「オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するものである。その生き方は努力する喜び、良い模範であることの教育的価値、社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする」(オリンピズムの根本原則1.)とあるように、オリンピックは競技者の成果発表の場というだけではなく、競技者、大会関係者、その他すべての人々との教育的で倫理的な国際平和実現のための共同事業なのです。

私たち新日本スポーツ連盟は、参加競技者の努力とパフォーマンスに対して、スポーツ団体として最大限の敬意を表するものですが、オリンピックにあっては、安全・安心、平和な社会の中でこそ競技者が輝き、感動を生むのです。

以上の諸点を考慮した上で、私たち新日本スポーツ連盟と東京都連盟は、組織委員会、東京都、JOCが国内外の市民の声、競技者の声に耳を傾け、人類の生命を第一として、今夏の東京オリンピックの中止決定をIOCに対して要請するよう求めます。オリンピック運動に取り返しのつかない傷跡を残さないために必要だと考えます。