新日本スポーツ連盟が『声明=スポーツから「体罰」・暴力・ハラスメントをなくすための共同を!』を発表

 新日本スポーツ連盟は、2013年2月24日、スポーツ界における「体罰」・暴力問題が次々に明らかにされるなか、『声明=スポーツから「体罰」・暴力・ハラスメントをなくすための共同を!』を発表しました。以下、全文を掲載します。
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声明=スポーツから「体罰」・暴力・ハラスメントをなくすための共同を!
 大阪市立桜宮高校のバスケットボール部キャプテンの自殺が顧問教師の「体罰」に起因することが明確になり、これを契機に学校の部活動における「体罰」・暴力問題が次々に明らかにされつつあります。
 学校の部活動における「体罰」だけでなく、全日本女子柔道監督の選手に対する暴力行為の実態とそれを黙認してきた全日本柔道連盟(全柔連)の後進的で閉鎖的な体質が明らかになりました。2月4日に公表された、柔道女子ナショナルチームの15選手連名による告発は、選手としての道を断たれる恐れや周りへの影響などを悩み抜き「必死の思い」で「競技者が、安心して競技に打ち込める環境」の整備を求めるとともに、「私たちは、すべてのスポーツにおいて、暴力やハラスメントが入り込むことに、断固として反対します」と述べています。(注:「ハラスメント」とは、嫌がらせ、いじめの意。セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなどとして使われる)
 こうした事態を受け、様々なスポーツ関係者、多くのスポーツ団体をはじめ国民各層の間で、スポーツから「体罰」・暴力をなくすための新たな努力が始まっています。
 新日本スポーツ連盟は創立以来、「スポーツは万人の権利」として発展させることをめざしてきたスポーツ団体として、スポーツから「体罰」や暴力をなくすために、すべてのスポーツ関係者、スポーツ団体と共同してあらゆる力を尽くしたいと考えています。
 スポーツにおいて、「体罰」や暴力は人間性と人権を否定するだけでなく明白な犯罪でもあり、絶対に容認できないものです。また、自主性の尊重とスポーツの価値の核心であるフェアプレイ精神と対極にあるものです。その点で、今後「体罰」や暴力を行使した指導者は、スポーツの指導の場面から無条件に排除し生徒や選手達を保護すべきです。同時に、スポーツ界をはじめ社会においても「信頼関係があればある程度の暴力も許される」などと「体罰」や暴力をふるう指導と指導者を容認する風潮が根強くあり、「体罰」・暴力を繰り返してきました。その背景には、スポーツ団体の非合理的で非民主的な運営、プレイ場面における選手の個性と人権を無視した指導など、スポーツ界の後進的な体質があります。さらには、本来スポーツ界の自主的な目標であるべき五輪でのメダル獲得目標を「スポーツ基本計画」に直接掲げるなど、政府・文部科学省が「メダル至上主義」「勝利至上主義」をスポーツ界に押しつけていた弊害も否定できません。
 いま、私たちスポーツに関わるすべての人びとには、自殺したキャプテンの死や柔道女子選手15人の勇気ある行動を無駄にしないために、スポーツ界の「体罰」・暴力とそれを容認する風潮をなくすための決意と行動が求められています。
 新日本スポーツ連盟は、”学校の部活動や子どものスポーツはもちろん、すべてのスポーツにおける「体罰」・暴力は、スポーツの価値を否定するものであり、スポーツとは絶対に相いれない”という立場をあらためて表明するとともに、自らの組織と活動においても、「体罰」・暴力・ハラスメントを絶対に容認しないことを宣言します。
 同時に、新日本スポーツ連盟は、スポーツ界から「体罰」・暴力・ハラスメントをなくすため、率先して奮闘するとともに、日本オリンピック委員会(JOC)、日本体育協会、全柔連をはじめ、すべてのスポーツ団体とスポーツ指導者が、共同して以下の取り組みを進めることをよびかけます。
(1)すべてのスポーツ団体と指導者は、「体罰」や暴力・ハラスメントを行わないことを表明し、今後、「体罰」・暴力を行った指導者はスポーツ指導の場面から無条件に排除すること。 
(2)スポーツの競技者が「体罰」・暴力・ハラスメントなどについて、意見表明する権利を保障する機構、制度を確立すること。
(3)すべてのスポーツ団体、スポーツクラブ・チームは、選手・競技者、会員の尊厳と人権を尊重し、民主的で公正・公平で開かれた組織運営に努めること。とりわけ、女性競技者の意見が組織運営に正当に反映されるよう女性役員の拡充をはかること。また、スポーツ指導やスポーツ活動の場面において選手・競技者の尊厳と人権を尊重すること。
(4)人間の尊厳と個性の尊重に重きを置くスポーツは「体罰」・暴力とは相いれないという指導理念の確立、さらに競技力の向上は、科学的で合理的な指導方法やトレーニング方法によって実現するなど、指導者の資質の向上をはかること。
(5)学校教育法で禁じられている「体罰」・暴力を学校の部活動から一掃し、部活動を生徒の主体的で自主的な活動として発展させること。そのためにも、顧問教師の専門的な知識と指導力を養成する研修制度の確立、適切な配置および奉仕的な活動への時間的経済的な保障をはかること。さらに、学校の部活動にたいし勝利至上主義と過度な選手養成を期待する行政やスポーツ界のあり方も検討すること。
 最後に、すべてのスポーツ団体が、わが国のスポーツからあらゆる「体罰」・暴力・ハラスメントをなくし、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利(スポーツ基本法)」にふさわしいスポーツを実現するために、協力し合い、広く国民的な討論を起こすことをよびかけます。
2013年2月24日 新日本スポーツ連盟
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