アングル

セオリーどおりじゃつまらない
第85回天皇杯・第76回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会(オールジャパン)
 強豪や王者と呼ばれるチームには、必ずといっていいほど決め事がある。シュートが入らないときはフォーメーション(チームで決めた攻撃法)を使って誰に攻めさせる。勝負どころでどうしても点がほしいときは、チームの得点源の選手に1対1をさせる。勝ちを知っているチームほど、ノーマークで確率の高いシュートを打つように練習している。

 だが、もっとも観客を沸かせるのは決まりきったセオリー通りのプレイではない。監督が望む教科書そのままのゲームプランでもない。ある意味、選手が自分で精一杯考えたプレイだったりする。

 近年、日本のバスケットボール界にはうまい選手が増えた。センターだけでなく、フォワードもできたり。ガードなのにフォワードもできたり。しかし、なにかきれいにまとまっていて、個性がなくなっているよいうに感じてならない。学校の成績でいえば、どの教科も満遍なくでき、すべて70点以上とれる生徒だらけ。たとえば、国語と社会はいつも20点前後をさまよっているが、ただ英語と数学はいつも90点以上。そういう生徒がもっといてもいいと思う。

 田臥勇太がなぜあそこまでファンをひきつけるのか。それは日本にないバスケットボールを見せてくれるからだ。速い攻撃からの華麗なアシストパスは未だ、観客を魅了して止まない。

 以前、大相撲で舞の海(170cm)という小柄な力士が曙(203cm)という大男と対戦した。どう考えても曙が有利だったが、素早い動きで下から相手のふところへ潜り込み、見事勝利を収めた。舞の海はその他にも、手を叩いて相手を驚かす猫騙しという技などでファンを魅了した。阪神タイガース時代の新庄も敬遠で外した巨人・槇原のボールをサヨナラヒットにしたことがある。

 今回のオールジャパンでも、観客が盛り上がる場面は多々あった。しかし、もっともファンが盛り上がるのは『誰も予想していないプレイ』なのだ。62-80と敗戦濃厚の中で、残り2.2秒からでも点を獲ろうとタイムアウトを取ったチームもあった。「なにかしたかったんです」と監督は言った。そういう気持ちは必ず伝わるものだし、その反骨精神がセオリーを打ち破るのだ。予想もしないプレイをした選手の気持ちを探ってみるのもおもしろい。(文=一柳英男)

「スポーツのひろば」2010年3月号より


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