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車いすラグビー 5-8位決定戦、日本vsドイツ
他人の薦めにしたがって良かったと思うことがあるものだ。車いすラグビーの取材もそうだった。初めて観戦したが、心も身体も揺さぶられるものがあった。車いすといっても、これまで見てきたものとはまるで違う。ぶつかっても壊れないように頑丈なバンパーがついている。特にディフェンス用の車いすは、櫓のようなバンパーが突き出ている。車輪の外側は硬い円盤で覆われ、スポークは見えない。まるで装甲車のように改造された車いすだ。
会場に流れるBGMはハードロック、クイーンの曲“We will rock you”が強烈なビートを刻み、体育館全体を揺さぶっていた。選手のファッションはパンクというのだろうか、ドイツ人選手は頭を真四角に刈り上げて金色の筋を入れている人もいる。全体に「ちょっと怖いお兄さん」風だ。競技が始まると、自分の身体を弾丸にして相手にぶつける「ガッツン、ガッツン」という音が響く。大きくて体重もあるドイツ人選手にぶつかっていく日本の選手は、衝突の反動で車いすごと40~50mも浮き上がっている。激しいぶつかり合いで車輪が壊れ、何度も試合を中断して交換していた。
膝の上にボールをのせてパイロン(コーン)の間を通過すると得点になる。ドイツが先に点をとると日本が取り返して同点に追いつく、一点をめぐる争いだった。体重とパワーに勝るドイツに、日本はマンツーマンでぴったりマークしたり、周りをグルグル回って相手の動きを封じたり、ゴールを妨害する戦術らしい。日本語の「ニッポン」コールの間に、中国語の「リーベン(日本)」コールも聞こえた。ドイツ側が1点先取したところで終わったが、数分遅かったら同点だったかもしれない、そんな拮抗した試合だった。
車いすマラソンと笹原選手のインタビュー
陸上の女子5千mで転倒事故に巻き込まれ土田和歌子選手がマラソンを欠場したのは周知の事実だろう。車いすマラソンにも転倒事故の可能性があるかもしれないと予想して、メダルに繋げた選手がいる。男子マラソン車いすT54クラスの笹原選手である。ミックスゾーンでのインタビューを紹介しよう。
「作戦どおり後ろから抜けていけた。競技場へ入る直前でクラッシュがあった。下見したときに危ないなと思ったので、先頭集団の最後尾につけていた。(勝負どころは)競技場の中かなと思い、コケないようにそれだけでした。一回くらいチャンスがあるんじゃないかと思って、作戦勝ちという感じです。」
今の気持ちはという質問には、「本当に嬉しいですね。(銀メダルは)信じられなかった」 今年限りでトップアスリートをやめるそうだが、今後のことについては「やりたいことは数えられない、言えないほどある」と言う。やりたいことが数え切れないほどあるという生き方ってすばらしいと思う。
デュトワとピストリウス
外国人選手の中でぜひ見たかったのは水泳のナタリー・デュトワ(南アフリカ)だ。交通事故で左足を失ったが競泳をつづけ、今回のパラリンピックでは5種目で金メダルをとった。北京五輪の水泳で注目されたマイケル・フェルプス(金8個)にも比せられる女性選手だ。50m自由形を自分の目で見たが、泳ぎを見ている限りでは健常者と変わらない。実は彼女はオリンピックでもオープンウォーター女子10kmに出た。さらに次のロンドン五輪にも参加するという。
南アフリカには、もう一人ロンドン五輪での出場を目指す選手がいる。両足義足のランナー、オスカー・ピストリウス選手だ。北京パラリンピックでは100m、200m、400mで3個の金メダルを獲得した。また、スポーツ仲裁裁判所の裁定でオリンピック参加の道もすでに開かれている。
このように、今やパラリンピックの選手は、オリンピックでも健常者と互角に争える高い水準に到達している。二人とも南アフリカの出身であり、今後この国のスポーツ政策にも注目していきたいと思った。
河合純一選手のコメント
河合純一選手の50m自由形(視覚障害)決勝も見ることができた。早い浮き上がりでプール中央では2位になり、その順位をキープしてゴールした。河合選手は96年のアトランタ大会から3大会連続してこの種目で金メダルをとり、33歳になった今大会で銀メダルに輝いた。その河合選手の英文のコメントが記者席に配布された。
「前大会(04年、アテネ)と比べて、日本は多くのメダルをとれなかった。我々日本のスイマーがベストを尽くさなかったというわけではない。他の国がパラリンピックを重く受け止め努力しているのに、日本はそれができていないということでしょう」と述べ、「トレーニングの時間を見つけるのが難しかった」こと、仕事との両立など練習環境の問題点を指摘していた。日本パラリンピアンズ協会(パラリンピック出場選手の選手会)の事務局長も務めている河合選手が競技環境の向上を訴えたものとして、共感を持ってこのコメントを読んだ。
ここで選手の練習環境と、それを反映するメダル数について考えておきたい。前回アテネでの日本のメダルは52個だったのに対し、今回は27個と半減したことになる。減ることを考慮して検討した(選手団長が結団式で語った)予想数39個よりもさらに少ない。減った原因をクラス分けの変更などに求めることもできるが、そこに主な原因があるとは思えない。
確かに、アテネで6個の金メダルを得た水泳の成田選手が障がいの軽いクラスへ移ったし、視覚障がいのマラソンで金メダルだった高橋勇市選手は弱視の選手と同じクラスになったため、メダルに手が届かなかった。だが、国別で見ると上位5ヵ国中の4ヵ国はメダル数を増やしている。中国211個(+70)、イギリス102個(+8)、アメリカ合衆国99個(+11)、ウクライナ74個(+19)。
クラス統合や変更の影響を超える競技・練習環境の改善、特に選手の育成策やそのための予算の確保など、政策面にもっと目を向け、飛躍的に改善することが望まれているのではなかろうか。河合選手がコメントで言いたかったのは、そこだと思った。
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