ユネスコの体育・スポーツ国際憲章30周年の意義
2008年11月号
 30年前の1978年11月21日、ユネスコ第20回総会は「体育・スポーツ国際憲章」(以下「国際憲章」)を採択しました。  その第1条で「体育・スポーツの実践はすべての人にとって基本的権利である」と宣言しました。そして、国際憲章前文の冒頭で国連憲章と世界人権宣言を引用したあと「人権の効果的な行使のための基本的条件の一つは、すべての人は肉体的、知的、道徳的力を自由に発達させ保持すべきであること、したがって、体育・スポーツを行うことがすべての人びとに保障されるべきであることを確信した」と述べています。

 これは、体育・スポーツは、人類の普遍的価値としての人権の確立とその行使にとって不可欠なものであることを明らかにしたものです。このことによってこの国際憲章は、スポーツにおける人権宣言として歴史的な意義を持つものとなっています。

 国際憲章は、スポーツ権の理念とその実現を国際的共通課題とし、スポーツ権の実現のための公的な機関の役割、スポーツの平和実現機能を認め、そのための国際的な協力を明記しています。その後国際憲章は、わが国の進歩的なスポーツ関係者を大いに励まし、スポーツの発展を願う人々の協力・共同を前進させる大きな力となってきました。

 さらには、国際的にもヨーロッパ・スポーツ閣僚会議の「新ヨーロッパ・スポーツ憲章」「ヨーロッパ・スポーツ倫理綱領-フェアプレイ勝利への道」の採択(1992年)やオリンピック憲章の根本原則にも、スポーツは「一つの人権」と明記されるなどスポーツに関する国際的な共通の理念・指針として有効性を発揮してきています。

 他方、わが国の政府やスポーツ界は、国際憲章を今日まで一貫して無視してきました。2000年のスポーツ振興基本計画の策定案に対するパブリックコメントで、スポーツ連盟が提案した「スポーツ権の明記」は無視したままです。

 今日、「健康で文化的な生活」を維持できない国民が増えている中で、国や自治体のスポーツ振興策は、その公的な責任を放棄し、民間企業の営利に協力する路線を強めています。このまま放置すれば、スポーツにおける「格差」が拡大し、スポーツが「一部の人々に独占」されかねません。

 今一度、国際憲章の理念に立ち返って、わが国のスポーツ振興の課題に取り組むべき時期を迎えています。(新日本スポーツ連盟理事長 和食昭夫)

「スポーツのひろば」2008年11月号より


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