インソールの役割
スポーツシューズに限らず、大方の靴に入っているインソール。取り外しができないものもありますが、それらの多くは製靴工程で張り付けられています。その役割は主に、①縫い目や針先などからの足の保護、②快適な触感の確保、③着地における衝撃の吸収・緩和、④靴と足型の適合
―――以上の４つがあります。シューズ売り場では、さまざまなインソールが販売されており、オーダーメイドで作ってくれるところもあります。その機能・効能を見ていきましょう。
1.アーチの補高による疲労軽減とパフォーマンス向上
 足には、いわゆる土踏まずとよばれている内側縦アーチ、一般的には意識されることはないが外側縦アーチ、そして中足部から前足部にかけての横アーチがあり、踵骨、拇趾球、小趾球が三脚の接地点のような役割を担っています（３頁図１参照）。このアーチを形成している組織（筋肉、腱、靭帯）と固有受容器という神経の末端部分のセンサーが働いて、立位の安定と歩行における足部の動きを司っています。インソールの代表的な機能であるアーチサポートは着地において自重と動きによる衝撃を吸収して、反力として次の動作（離床）へのストレスの少ない重心移動をすることで、疲労軽減とパフォーマンスの向上に効果をもたらします。
2.材質による機能の向上
インソールの材料に使われる衝撃吸収材は、文字通り衝撃を軽減させてくれます。しかし、吸収力と反発力は相反する関係にあるので、とにかく柔らかいほどに優れているということではありません。柔らかすぎると早い動きが求められている瞬間に、イメージ通りの蹴り出しができずに動作が遅れ、パフォーマンスの低下につながります。 材質による他の機能としては、活性炭などを入れ込むことによる抗菌や蒸れ防止などがあります。 また、特に素足に近い状態で履く場合には、オーバーマテリアル（一番上の生地）の種類によって快適な触感の獲得とマメの予防に効果をもたらします。
3.サイズの補正
 これに関しては、本来シューズ選びの段階でクリアしていなければいけないことであり、インソールの効果として謳うべきか疑問ですが、確かに改善策となります。
シューズ内の端は垂直に切れあがっておらず、中心に向かって内側に傾斜しているために、大きい靴底に平らなインソールを一枚敷き入れることで遊びが少なくなります。しかしその分、甲が圧迫されたり、踵が浮き上がってしまうことがあります。また、足の高さが上がることで、本来考慮されて作られたシューズ全体としてのバランスを崩すことにもなりかねません。
オーダーインソール
市販のインソールは、１０００円未満のものから、特別な材質や機能サポートを盛り込んだ４０００円以上するものまで様々あります。しかし、足の形状は驚くほど個人差があることとシューズも千差万別であることを考え合わせると、足とシューズの間を取り持つインソールは、オーダーメイドであることが望ましいと言えます。では、オーダーインソールで飛躍的に向上される効果はどんなものがあるでしょうか。
オーダーで作るということは、足とシューズの現状分析（診断）を基に作られることになります。よって、足の形状はもちろんのこと、関節の柔軟性、マメや角質など皮膚の状態、ウチ返しや外返しなどの歩き方のクセ、脚長差や身体バランスをも考慮して作ることができます。また、運動種目と各自の能力までを加味することが可能です。
1.疲労軽減
 アーチサポートと衝撃吸収は、立位と歩行における無意識的なこわばりや無駄な動きをなくして疲労を軽減させます。アーチの重要性は前述の通りですが、アーチの吊上げの役割を担う舟状骨の位置や進行方向に対する横アーチの傾斜の度合い、前足部と後足部の大きさの比率、加重のポイントによって、その高さや面積、位置が変わります。より適合した状態が効果を発揮することは言うまでもありません。
2.障害対応
アーチサポートを行うことで回復効果が最も期待できるスポーツ障害としては、足底腱膜炎があげられます。
また、拘縮を伴うハイアーチに対しては、衝撃の吸収を滑らかにして足関節や膝関節への負担を軽減、捻挫や骨膜炎のリハビリや予防にも応用が可能です。外反母趾や踵骨棘の痛みや中足骨の骨頭痛に対しては、該当部位の材質を柔らかくして圧を逃がすことにより痛みを緩和できます。
3.足型や身体バランスの矯正、フォーム改善
プロネーションのクセが激しかったり、脚長差など左右のバランスに大きな違いがある場合は、ウェッジ調整などでバランスを補正。ただし、これらはアンバランスな状態を受け入れることになり、身体そのものを矯正することには至りません。
インソールで身体そのものを矯正するには、専門家のアドバイスにしたがって調整の度合いや使用頻度を計画的にコントロールすることが必要になります。
4.スポーツパフォーマンスの向上
ウォーキングやランニングなど、前方への推進力をサポートするだけに限りません。
ダンス系の種目やボールゲームなど、左右を含めたブレーキングやターンオーバーを頻繁に行う競技においては、深めのヒールカップと中足部全体のサポートを施すことで素早い動きと関節への負担を軽減します。
変わったところでは、バイク用のインソールは足底の金属部に該当する部位は補強し、後足部を高くしたりすることで素足での素早い踏み込みをサポートできます。
インソールの注意点
 市販のインソールの使用で注意すべきことがいくつかあります。一つ目は、シューズに入っている既存インソールの取り外しが可能かどうか。平らなものならともかく、カップインタイプの上には重ねないこと。
２つ目は、ラスト（前足部への曲り具合や全体の型）が合っているかどうかを見極めること。サイズが合っている場合でも、シューズのラストが異なっていては、アーチが合わないばかりか、挿入時に歪みを生じさせてしまいます。
最後は、サイズカット。シューズの型に合わせて切り落として使用するのが主流ですが、切り落とすのはつま先部分であり、踵を切り落とさないように注意してください。そもそも袋から取り出してみなければ適合するかどうかがわからないという商品の在り方が問題といえます。
では、オーダーインソールは問題がないのでしょうか？ 「せっかく作ったのに足に合わない、痛い」といった声を聞くこともあります。足の解剖学、靴学、歩行のメカニズム（あるいは競技特性）のすべてにわたる知識が動員されるのが理想です。名医、シューフィッター、熟練職人が関わったとしても、また、ハイテク分析機器、高機能なマテリアルを使ったとしても、融合されなければ良いインソールは作れません。信頼できるところで納得して作ることが大事です。インソールの活用は、満足のゆくパフォーマンスと、かけがえのない健康へと結びつきます。
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